P科道中膝栗毛

とある場末の精神科医局員が医療について思うこと、投資、転職の話などを極論で語ります

医者になるデメリットを今敢えて語る

医学部に入って医者になれば将来安泰だの、

社会的ステータスだの、

良い事を沢山書いている本やブログは無数にある。

 

しかし、デメリットについてはあまり語られない傾向にあるので、

敢えてデメリットを語ってみる

 

 

 

医者になるデメリット

時間的リスク

在学年数が最低6年必要

医者になるためには、医師免許が必要です。

それを得るためには医師国家試験に合格しなければなりません。

その受験資格を得るためには、医学部を卒業しなければいけません。

医学部は、最低6年在学しなければなりません。

医学部に入学するのに、浪人すれば、更に伸びます。

 

 

資格をとるのに最短で6年です。

一般大学であれば、在学中に時間的余裕もあるので、留学したり副業を考えたり色々できるかと思いますが、医学部の場合はそうはいきません。

基本的に週5日間、朝から夕方までずっと必修の講義、実習があります。

しかもどれか1つでも落第すれば即留年です。

 

イメージとしては高校の授業数を増やして合格基準を厳しくした感じでしょう。

あなたは10代後半~20代前半の時間を医学に捧げられますか?

 

医師免許取得後も道のりは長い

晴れて医師国家試験に合格すると医師免許証が送られてきます。

 

しかしこれであなたも一人前!とはいきません。

 

医師免許取得後に2年間は初期臨床研修(以下、初期研修)を行わないと、一人で医療行為を行うことができません。

これをクリアしていないと、健康診断や居るだけでほぼ何もしなくても良い当直(通称、寝当直)ですらできません。

 

初期研修は様々な診療科を数か月ごとにローテーションします。

広く浅くというやつです。

 

初期研修が終わると、どの診療科を専門にするかを決めます。

初期研修中に専門とする診療科に従事する事もありますが、数か月で覚えられる事などたかが知れています。

なので、この時点では一人では大した事は出来ません

 

科を決めてからは、その診療科でやる事を覚える、後期研修が始まります。

ここから一人である程度の事を独立してやらせてもらえる、出来るようになるには、

更に3-10年程度かかります。

 

大学入学前から考えると、

 

大学在学 6年

初期研修 2年

後期研修 3-10年

 

6+2+3-10と悠に10年を超えています。

 

あなたはこれだけの時間と労力を医学に捧げられますか。

他にやりたい事はないでしょうか。

 

また、10年後の医療がどうなっているか想像できますか?

現在医者になっている人をみて、新たに参入しようとしたとして、

10年後にも同じような勤務や待遇があるとも限りません。

 

なるのに10年以上の時間を要するというのは、そういう事です。

時間的リスク」というやつです。

金銭的リスク

大学を卒業して働き始めるまでは、当然ながら給料などありません。

逆に高額な学費を支払わねばなりません。

予備校に通う、遠方で単身生活をする場合は、その費用も上乗せされます。

 

一番安い国立大学医学部の場合は、学費は6年間で350万円のようです。

しかしそういったところはそう多くなく、私立大学に行く場合は2000万弱が必要です。

 

遠方の国立大学に合格した場合も、単身生活の費用もざっくり休めに15万円/月で見積もって計算すると、15万円x12か月x6年=1080万円かかります。

場所によっては自家用車も必要でしょう。

 

しかも通学していれば簡単に卒業出来るものではなく、留年や退学により余計に時間とお金を失うリスクもあります。

 

留年を繰り返した場合、強制的に中途退学になるリスクもあります。そうなった場合、少し医学に詳しいただの人です。何も得るものもなく、学費の分のお金と時間を失います

 

 

制度的な問題

上記の6+2+3-10年という年数がまた問題です。

大学6年、初期研修2年は、国が管理しており、そこから外れて何かをするといった事が出来ません。前に進みたかったら否応なしにその通りに働かなければいけません。

 

プログラマーやエンジニア等であれば、実力次第で先取りで起業したり請負で働く、在宅で働くといった事が出来ます。

(ただしそういった職種は実力主義がかなり強いので、本人次第でしょうが。)

医者の場合はそういった事は全く考慮されておらず、制度に乗って上記の年数をクリアするには、国が指定した病院で、指定した日数を働くしかありません

 

その後の後期研修も同様です。

 

追加で専門医の資格を取得したいと思えば、特定の病院で特定の日数働くなどの条件をクリアしなければなりません。

 

家業や副業、育児等と平行して一部単位のみ取得しておく、

週に数日働くといった方法はほぼ考慮されておらず

その間は制度上は何もしていなかったとみなされる事が多いです。

 

今までは後期研修の制度を国ではなく各学会が管理していましたが、

2018年度から国が管理するようになりました。

なので、今後はそういった条件がより厳しくなる事が予想されます。

 

また、それ以外にも、今後の制度変更により、就労形態や就労地域等にも今後さらなる制限が増える可能性があります。

日本においては医療の大部分を占める保険診療を、国が運営しており、そこからの方針に大きく影響されているといえます。

 

 

専門性が高すぎて潰しが効かない

医学の事しか教えてもらえない

入学後の1-2年は一般教養を教わりますので、その間は普通の大学生のような教養を付けることができます。

 

しかし、ここにはあまり力を入れている様子はなく、医師国家試験の合格率を上げることに各大学とも躍起になっており、ないがしろにされる傾向が強いです。

 

その後の専門課程に入ると、医学の勉強しかしませんので、それ以外の事を勉強したかったら、自分で勉強するしかありません

 

周囲の環境も閉鎖的

医者は同族で集まりたがる傾向が強いです。

 

 

大学には他学部も併設された総合大学と医学部だけの単科大学の2種類があります。

 

単科大学は、医学部生と医者しか出入りしていないので、身内で固まるのは当然の流れでしょう。

総合大学でも、サークルなども医学部だけで分かれている事が多く、

やはり同族で集まる傾向が強いようです。

 

各大学の卒業生が、大きい顔をしてサークルに出入りしている事が多いのもまた、閉鎖的と思われる所以でしょう。

 

周りに医者とその関係者しかいない、放課後もそういったサークルで大きい顔をした卒業生の機嫌を取ったり武勇伝を聞かされ続けます。

 

閉鎖的ゆえに、他業種の人と接する機会はかなり希薄です。

 

なので上述のレールに普通に乗っているだけでは、10年もしたら医者以外の事は何もしらない完全な世間知らずです。

 

医者以外の事を始めようとしても、すべて勉強するしかないのです。

 

将来性の問題

日本の医者の主な収入源は給与ですが、この給与の元をたどれば病院の売り上げ、大半は保険診療による診療報酬でまかなわれています。

しかし高齢化が進み、医療費が増大傾向である昨今、今後も現在の診療報酬が維持されるかには疑問が残ります。

被保険者の負担割合の増加、診療報酬の切り下げ等の可能性もあります。

そうなれば現在の給与水準が維持されるのかも怪しいでしょう。

 

 

まとめ

医者になるデメリットは、以下の通り。

  • なるまでも、なって国が定めた諸々の制度から自由になるまでも、時間とお金がかかりすぎる。
  • 制度上の自由度が低く、途中で医者以外の事を始めたい、平行して何かやりたいと思っても身動きが取れない。
  • 閉鎖的、専門的すぎて医者以外の事は覚えられない。
  • 国が今後何らかの方法で医療費の増加を抑える方針を打ち出す可能性があり、将来性に関するリスクがある。

 

  

気が向いたらメリットについても書いてみる予定です。