P科道中膝栗毛

とある場末の精神科医局員が医療について思うこと、投資、転職の話などを極論で語ります

医者になりたくないけどなっている人達

例えば、旅行に行きたくないのに行っている人は居るのでしょうか。

家族の付き合い等の事情で行っているという例はあるかもしれません。

 

マンガを読みたくもないのに読んでいる人はどうでしょう。

出版社の編集であれば、そういった事もあるでしょう。

仕事で給料が貰えるから仕方なくやっているというパターンです。

 

それでは医者になりたくないのになっている人は居るのでしょうか。

そういった人達について考えてみようと思います。

 

医者になる動機

なぜ、受験勉強や高い学費、

長い修業年数をも顧みず医者になりたいと思うのでしょう。

 

これは面接や聞き取り調査だけでは

計り知れないものがあります。

 

表向きの動機

これはある意味で「教科書的」なもので、

面接対策の本に書いてあるような内容です。

 

面接官や世間からの医師像という、

暗黙の了解に修飾された理由です。

 

  • この病気の研究をしたい
  • この地域の医療に貢献したい
  • 尊敬できる医師のような診療をしたい

などがこれに当たるでしょう。

 

ここでは、下で云う真の動機を答える人はお呼びではないのです。

 

試されている能力は、

「本心でどう思っているかは別として、

相手のニーズに合った答えを出せるかどうか」

なのです。

 

質問の答えを聞いているのではなく、空気を読めるかどうかを聞いているのです。

 

真の動機

上の表向き動機として採用しても問題ない動機を持っている人は、

なりたくて医者になっていると言えるでしょう。

 

それでは、真の動機はどのようなものなのでしょうか。

 

周囲の人を観察していると、

  • お金稼げそう
  • 社会的ステータス
  • モテそう
  • 資格があれば雇用が安定しそう

等がありそうです。

 

この辺の理由は、衆目に晒すには不純ではあるものの、

まだ本人の動機であるだけマシでしょう。

 

そして、こういった野心的で不純な動機を持った人は、

得てして上手く立ち回り、

最終的にその不純な目的を達してい事が多いようです。

 

他人の動機

ここまで来ると本人の動機ですらないですね。

  • 親が開業医なので継がなければならない
  • 高校や予備校の講師に勧められた

などです。

 

周りの希望で仕方なく、というやつです。

まるで政略結婚に出される戦国武将の娘ですね。

 

本人もそれに気付いた上で敢えて希望するのであれば

構わないのでしょうが、

大学受験をする年代の人が、

必ずしもそこまで洞察を深められるとは限らないでしょう。

 

医者になりたくない人達の末路

では、医者になりたくない人達はどれだけ居るのでしょうか。

自分の周りでは、大きく以下のような人たちが見受けられました。

 

そもそも医学部に入れない

受験勉強に身が入らない、

受験勉強をしても合格できるだけのキャパが本人になかった場合は

こうなります。

 

入学すらしていないので、

失うものは浪人した時間と受験料程度でしょう。

 

1-2浪程度であれば他学部でも十分やっていけるでしょうし、

受験勉強そのものはそちらに生かすことができます。

 

ただし、3浪以上になってくると、

かなり年齢が上がってしまい、

他学部に入ったとしても就職に影響する可能性があるでしょう。

 

在学中に頓挫

この中では、

  • 別の道を考えて自分で退学
  • 留年を繰り返し強制退学
  • 自殺

などがあります。

 

自主退学にしろ強制退学にしろ、

間とお金を失うのでやり直しはそれなりに大変です。

 

年数を重ねれば重ねるほど、

かかる時間とお金も増えていくので、

引くに引けない。

 

しかし本人はその気がないとなると、

泥沼化していきます

この辺のリスクに関しては、別記事で詳しくまとめています。

 

inacafe.hatenablog.com

 

「他人の動機」で入学したはいいが、

結局それに耐えられず自殺した例もありました。

 

仕事だと割り切って行うにしても、

程度があるという事でしょう。

 

卒後

「卒業はしたが、医師国家試験に合格せず浪人している状態」は、

在学中とほぼ同じ状態なので、

上の延長線上にあるといえます。

 

異なるのは、学費がかからない事です。

 

しかし、医師国家試験を再度受験するのであれば、

予備校の通学費用などが必要になるため、

結局お金も時間もかかるという点で大差ありません。

 

医師国家試験は、

医学部を卒業していれば何度でも受験できるので、

しばらく受験しないことも可能です。

 

ただし、ブランクの後に受験しようとしても、試験の内容や傾向を覚え直すことに大変な手間を要するので、

あまり現実的ではありません。

 

不合格のまま受験を辞める=医師免許は諦めることになります。

 

医師免許取得後

医師免許があるからといって、必ずしも医者として働く必要はありません

 

ここからの進路として考えられるのは、

  • 医者として診療・研究業務を行う(最も多い)
  • 行政機関に就職(保健所、医務官など)
  • 一般企業に就職(製薬会社等、関連のあるものから無縁なものまで)

などが代表的でしょう。

 

他にも、一般の人の取りうる進路は可能性として何でもあり得るので、

  • ブログやネットビジネス等で起業
  • 資産家でそもそも働く必要がない
  • 医者以外の家業を継ぐ
  • ニートになる

など、多岐にわたります。

 

卒業して初期研修を終え、何処かしらの診療科で数年働いていれば、

中途採用やアルバイトの働き口はいくらでもあります

 

こうなれば一般的な臨床医が取る経歴から外れても当座の問題はなさそうです。

 

ただし、ここまで来るまでの期間と労力は相当なものなので、

他人の動機で目指すには相応のリスクが伴います。

 

 

また、どこかで離脱するにしても、

初期研修を行っておくか、

専門とする診療科で何年働いておくか...

など、難しい判断になる点も多いです。

 

少しでも医者としての仕事(アルバイト等でも)をしたいと思えば、

初期研修は行っておく必要があります。

その後何年働くかは、科ごとの上位資格にどこまで拘るかになるかと思われます。

 

まとめ

医者になりたくないけどなっている人は一定数居る

 

なりたくもない状態で大学に入るのは、

中途退学や留年等で色々な物を失う可能性を考えると、

相応のリスクがある。

 

卒業出来れば案外何とかなりそうだが、

医者としての一般的な経歴をどこまで続けるかは難しい問題。

 

 

やりたい事、

向いている事、

お金を稼げる事(大儲けしなくても生活できる程度には)

 

これらのバランスと選択は難しいものだと改めて思いました。

 

 

しかもそれを高校生程度の人生経験で決めなければいけないとなれば、なおのこと。